英語学習の材料置き場

上級英単語Botのエクステンションです。主にリスニングなど、英語学習に役立ちそうなものを紹介していきます。

効果的なリスニングとは【Krashen Comprehensive Input】

英語の学習のためにリスニングをする人は多いと思います。このページを読んでいるということは、少なくともリスニングに興味があるはずです。

しかし、本当にリスニングは効果があるのでしょうか?また、どのようなリスニングをしたら一番効率的なのでしょうか?

この謎は未だに結論が出ていませんが、いろいろな理論が発表されています。今回はその中でも、1980年代に発表されたSteven Krashenという言語学者のスピーチを紹介したいと思います。発表当時は画期的なアイデアだったこの理論は、今でも広く支持されています。

 

動画 (イヤホンで聞く場合、主に左からしか聞こえません)

www.youtube.com

内容の要約

人々はみな同じ方法で言語を取得します。学ぶスピードは違えど、学ぶ方法は同じです。

人は皆違うから、学び方も違うという考えがあります。右脳が強い人、左脳が強い人がいるように、確かに一人ひとりみな違います。しかし、言語を学ぶプロセスは皆同じです。消化を例として用いましょう。違う国の人だろうと、同じ方法で消化します。肘や頭ではなく、消化器官を使って消化します。言語学習もこれと同じです。

話すだけではわかりにくいので、実際に外国語の授業をしたいと思います。二つの違う方法を使うので、どちらの方が好きか考えてみてください。

レッスン1

まず最初に私があなた方にドイツ語で話しかけます。もしずっと私がドイツ語で話していたら、聞いてるあなた方もドイツ語を把握できるようになると思いますか?

多分そうはなりません。繰り返し聞いても無駄ですし、大きい声で言っても無駄です。例えば聞いたドイツ語を反復練習したり、文章をモニターに映したらどうでしょうか?これをディクテーションしたり、リスニング穴埋め問題にしたらどうでしょう?

結論を言うと、これらのリスニングはすべて役に立ちません。

レッスン2(3:17からです。この部分は、動画を見てから読んでください)

手や頭を指しながら、それをドイツ語で紹介します。そして簡単な質問をして、「はい」と答えさせます。その後、絵をかきながら先ほど出てきた単語と新しい単語を使って絵を解説していきます。

「これはミスタースパークです」

「ミスタースパークは、耳が二つあります」(耳を指しながら)

「目…」(目を書きながら)

「目が、一つ、二つ、三つ…目はいくつあるべきですか?二つですよね?」

レッスン2は1よりも理解できると思います。全ての単語が理解できなくても、最低限必要なことは分かったはずです。ここで、言語の学びに関して、最も重要な秘密をお教えしましょう。

私たちは、ただ一つの方法で言語を学びます。それは、相手の意図を理解することによってです。これは、Comprehensible Inputと呼ばれています。

重要なのは、人がどうやって喋っているかではなく、何を伝えているかです。

 

なぜレッスン2の方がレッスン1よりも良かったのでしょうか?それは、ミスタースパークのおかげで、意図が理解しやすくなっていた点です。絵や知識など、外国語のリスニングを理解しやすくするものは、言語学習の役に立ちます。(この理論はInput Hypothesisと呼ばれています)

スピーキングについて

この理論が正しいとすれば、付随するいくつかの仮定も正しいことになります。その中でも驚愕的なものがあります。それは、スピーキング練習は無駄、ということです。

車やお風呂場で一人で話したり、鏡に向かってスピーキングすることは役に立つ、と私も思っていました。

スピーキングは、言語を習得していくうちに徐々にできるようになります。このことはすでに論文などで証明されていますが、それを読む代わりに、同じことを証明するある話をしたいと思います。

1974年、私はニューヨークのマンションに住んでいました。隣のマンションは日本の会社の社宅でした。なので毎年、親と共に、英語を話せない日本人の子供が引っ越してきました。私は大学で言語学を教えていたので、その子供たちに英語を教えようとしました。

さて、隣には4歳のヒトミという女の子が住んでいました。英会話を練習すれば英語を喋れるようになるだろうと思っていたので、「ヒトミ、Good morningって言ってみよう。Hiって挨拶するんだよ」と言いました。しかし返事はありません。

もっと具体的にすればよいと思い、「Ballって言ってごらん」と言いました。返事はありません。発音の基礎から教えようと、「まずはBa,Baって言ってごらん」と言いましたが、やはり返事はありません。

子供に喋ってもらうためには、強いて喋らせなければいけないと主張している人たちもいるので(これはBehaviorismと言われています。今度詳しく書く予定です)、「君がBallって言わなきゃこのボールをあげないよ」と言いましたが、うまくいきませんでした。最初の週も次の週も彼女は無言で、5か月経つまで彼女は英語をしゃべりませんでした。

しかし、この喋らなかった期間も、彼女は英語を学んでいました。子供というのは、他の子どもが言っている言葉を覚えます。完全に理解しているわけではありませんし、使い方も間違えてたりしますが、なんとなく意味を察することはできます。

さて、5か月たってヒトミは英語を話したわけですが、いくつか特徴的な点がありました。

 1.英語は彼女の第二言語だけど、まるで母国語と同じプロセスで習得していました。(注:当時、外国語は別として、子供がどのように母国語を習得するかについてはすでに研究されていました)

   最初は1単語だけ、だんだん単語数が増えてゆき、文章で喋るようになりました。これは、子供が母国語を習得するときの順序と同じです。

2.彼女は外国語をとても早く習得しました。彼女の家族が日本に帰る直前には、彼女は近所の子供たちと同じくらい上手に英語を話していました。

リスニングについて

さて、話始めるまでの5か月間、彼女は何をしていたのでしょうか?彼女はリスニングをしていたのです。リスニング(=インプット)を理解しようとしていました。なので彼女が英語を話し始めた時、それは彼女が英語を学び始めた時ではなかったのです。むしろそれは、彼女の5か月のリスニングの結果でした。

この、リスニングしているだけで喋らない期間は、言語習得では普通のことです。赤ちゃんも最初は聞いてるだけで、言葉を話したりはしません。何も発言しなくてもいい外国語の授業があったら素敵だと思いませんか?理想の授業とは、生徒はただ外国語を聞いて理解し、何も答えなくて良い授業です。もしリスニングの内容を理解できないのなら、それは生徒のせいではなく先生の責任です。

私はスピーキングに反対しているわけではありませんが、スピーキング練習をすることは、外国語の習得に直接的にはつながりません。

11:40からの内容は、次回紹介したいと思います。

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まとめ

  • リスニングでは、ただ聞くのではなく理解しないと意味がない。
  • 理解しないまま繰り返し聞いたり、ディクテーションしても意味がない。
  • なので、自分の知っている分野などに関係のあるものや映像付きのものなど、理解しやすいリスニングをする必要がある。
  • 無理してスピーキングを練習するのは効率的ではない。

つまり聞き流しよりも、例えばドラマやニュース、アニメなど、自分の好きな分野のリスニングをすると一番効果的だということになります。特にドラマやアニメは、ストーリー性があって、雰囲気から察することができるので理解しやすいですね。